2008年3月30日日曜日

弥勒世

◆読んだ本◆

・書 名:弥勒世

・著 者:馳星周

・出版社:小学館

・定 価:上1,800円 下1,800円

・発行日:2008/2/25


◆評価◆

・魂を取り戻そうとあがく男の物語度:★★

・虐げられ続けた沖縄と米軍との軋轢度:

・行動とは裏腹に、奇異なほど若い精神の主人公度:


◆ひとこと◆

ベトナム戦争や本土復帰に揺れる沖縄。新聞記者の尚友は、沖縄にも、卑屈な自分にも、すべてに対して嫌気がさしていた。そんなおり米軍の関係者から、スパイまがいの情報収集活動を依頼され…


日本本土や米軍から虐げられる沖縄。彼らに迎合する沖縄。ベトナム戦争に送られる米兵たちの鬱屈と、彼らをとりまく沖縄の住民。

そんないろんなわだかまりを背景に、物語は展開する。


主人公は共に施設で育った尚友と政信。

頭がよく如才ない政信に、尚友はずーっと劣等感を感じている。

一方政信も沖縄のありかたに不満をかかえ、やくざなどの人脈を使ってある計画を企てる。


男達が企てる計画は展開が遅くて、読んでいてややつらい。

要所要所で触れられる、自分の居場所のなさと無くした魂についての描写も、昔の著者だったら、とっくに殴り合ったり殺し合ったりとエスカレートしているはずが、心象風景が繰り返されるばかりで、なかなか進行しないし。


そんな展開の中でもひとつ奇異なのは、主人公尚友と恋人の関係。

半分ならず者の尚友なのに、恋人に対しては高校かと思わせるような若い感情で接する。彼女に大しての感情を持て余し、自分を理解してくれないだろうことにいらつき、かと思えば甘える。


なんだかチグハグだ。

つらいことがあったからといって、彼女の膝で泣くような男が主人公のノワールなんて、過去には想像つかなかったぞよ。

どんな男にだって、弱々しくなったり女性に甘えたり戸惑ったり心と裏腹な言葉を投げつけてしまうことはあるけれど、それをそのまんま書いてはプライベートすぎてなじめない。ちょっと赤面だ。


ラストも、長い助走の割には飛んでないし。

「それじゃ、もっと納得のいく文章をお前が書いてみれ!」といわれても書けないんだけどね。


 


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